第10章 2012
「今日研磨は部活?」
隣で運転するお兄ちゃんと話す。
『うん、夕方まで。…ていうかお兄ちゃん帰ってから運転何回目?』
「え?今日これ1回目」
『ひゃあ、いきなり街へ繰り出して大丈夫?』
「だいじょーぶだいじょーぶ」
アメリカも台湾も左ハンドルの右側通行
前に一度帰ってきたとき、
車線を間違えたことがある…
田舎の方の海へいく道で、
車が他にいなかったからよかった…し、
しばらく気付かなかったんだけど
「オーストラリアとかニュージーとかイギリスとか…
右ハンドルの国もちょこちょこ周ってっから。
違うということに、その切り替えに慣れたわ。安心せい」
『そっか。お兄ちゃんがそういうならもう心配ない』
「………。穂波、ちょろい奴と思われないようにな」
『…お兄ちゃんと研磨くんとカズくん』
「…は?」
『お兄ちゃんはまたちょっと違うけど、
研磨くんとカズくんは言ってることそのまま受け取ってる』
「……」
『あ、別に他の人たちを疑ってるって意味じゃなくて。
口数少ない分、…なんだろ。魔法の力が強い』
「…魔法、じゃねーだろ」
『ん?』
「魔法っていうとなんかトリックっぽいじゃん。
そういう奴の言葉は、魔法じゃなくて………何?わかんないけど」
『……そっか。そうかも』
「……」
『あ、でも最近カズくんはね、ちょっと変化がある。
クールさも周りとの付き合い方もさほどかわんないけど、
わたしにはなんか前よりずけずけくるというか、Sっ気がすごい』
「いやいや…笑 カズマはちっせー時からSっ気あっただろ」
『…………。あぁ、たしかに、そうだね。
…でもね、クリスマスのときね…………』
お兄ちゃんには夏にハワイで会ってるのに、
話が尽きない。
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あっとういう間に1日が過ぎる。
明日は早朝に3人とも出発して1週間、わたしは一人で留守番だ。
高校生の頃のお兄ちゃんだったら、
友達を呼んだりしてわいわいと自由時間を謳歌したんだろうけど、
わたしは一人で1週間も家で過ごせるってことに結構わくわくしてる。
…研磨くんにはいつだって来てもらいたいけど