第10章 2012
おれが上着とか手袋とか取りに行ってる間
穂波は母さんと父さんと玄関で話してた
「…穂波、いこっか」
外に出る。…さむ。
「…穂波、自転車置いてったら」
2人で自転車押して帰ろうって思ってたんだけど
『へ?なんで?』
「…手、繋げない」
こんな寒いのに手、繋げないとか…
なんか…
『………。本気で言ってる?』
「半分」
『…んー』
「…」
『研磨くんのいうとおりににしたいが半分。並んで自転車押したいが半分』
「…じゃあ置いていって」
『…研磨くん帰りは?』
「電車乗る」
『………』
「………」
『…うん。じゃあそうする』
やった。
何でも言う通りにする穂波じゃないから
勝算も半分の願い事だったけど…
穂波の自転車をおれのの隣に置いたら
腕を組んで、その手を繋いでポケットに入れて歩き出す
寒いけど、あったかい
雪が舞ってるから2人ともフードを被って。
『寒い寒い。けどあったかい』
白い息をはーはーと吐きながら、
隣で穂波はとても楽しそうにしてる
「…雪、結構降るね」
『…うん、うっすら積もったりするかなぁ』