第10章 2012
ー研磨sideー
しばらく穂波に抱きついてたらあっかくなった。
ほかほかの親子丼に大根のサラダ
あと、母さんが作った味噌汁
自分の家だから余計に、なんだろ…
特別な感じがするというか
誕生日のご飯とも違ってすごく、日常っぽい感じが、
なんか…なんだろ。
よくわかんないけどおれは嬉しいのかも
変なの。
「…美味しい。サラダも美味しいね」
『うん、お味噌汁も美味しいね。…研磨くんずっとみてた?作り方わかった?』
「…卵を一回でいれないこととか」
『………』
「…うん、全部見てたよ。確かにすこし覚えたかも」
『ふふ。親子丼さっと作ってもらえたら、お母さん喜ぶと思う。
勝手な想像だけど』
………。
母さんに作るって。
それは、しないかな…
「いいよ、食器はおれ洗う。穂波、こたつにいて」
『うん、ありがとう。…でも、一緒にしたいな。いい?』
穂波はほんと、段取りがいいから
何かしてる間に洗い物をちょこちょことやってて
シンクがごちゃってしてることがない。
節水にはため洗いがいいんだけどなかなかできない、って前に言ってた。
だからほんと、いま食べた皿と箸くらいしか洗うものがない。
「…ダメじゃないけど、なにするの」
『…確かにさほどすることないか。じゃあこうしてる』
そういっておれの背中に抱きついてくる。
「…え、やりづらい」
『…笑 え!それ研磨くんが言う?』
「穂波もこんなやりづらかったの?」
『ううん、わたしはそんなやりづらくなかったよ。
研磨くんがくっつき上手なのかもしれないね』
そんなことを言いながら腕を腰に回したまま離れない。
仕方ないからそのまま皿を洗った。