第3章 歩み
「…手、繋いで食べてみる?」
研磨くんがいきなりそんなことを言うものだから、
昨日自分で言ったことを思い出して恥ずかしくなった。
『…ふふ。でもいま繋いだら、利き手で繋いじゃうから食べれないね。笑
また…またの機会に、しよ。いまはこうやって近くで食べてるだけで…』
左利きのわたしが右に、
右利きの研磨くんが左に座ってると、
箸をもって食べる時、どうしても肘が…
「…ぶつかる」
その時微かに、でも確実に、
研磨くんがちょっと困ったような空気を出した。
『…ふふっ、研磨くんって、言葉少ない分、分かり易いとこがあるね。笑
こういうときは』
わたしは椅子に対して少し斜めに、
研磨くんの方を向くように座りなおした。
『こうすれば、いいかな。…どう?』
「…うん。いい感じ」
それから何を話すでもなく、
2人でお弁当を食べた。
今日はすこし、雲が多い。
時々髪を、肌を撫でる風が吹いて、心地良い。
研磨くんは携帯電話を取り出して、ゲームを始める。
何一つ無理のない心地良い時間。
掃除のチャイムがなった。
研磨くんがゲームを終了しながら喋り出す。
「…そうだ、五限に生物がきてたよね。
…生物室、一緒にいく?」
『そっか!四限、生物じゃなかったね。
うん、一緒に行こ』
「…ん。」
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放課後、帰る支度を整えて、
研磨くんのところへ行く。
『研磨くん、今日は一緒にいっぱい過ごせて幸せだった。
いろいろと、ありがとうネ。また明日ね』
「…うん。またね。いってらっしゃい」
研磨くん、いってらっしゃいって、前にも言ってくれたな。
いってらっしゃいって、幸せなことば…