第10章 2012
穂波はあったかいカップを両手で持ってあっためてる。
「…片手、繋ぐ? .繋いでても飲めるよ」
『………ふふ。…うん、そうする。…でも、冷たいよ』
「…ん、知ってる」
俺の左手と穂波の冷たい右手を繋いで
こたつ布団の下のおれの足の上に乗せる
『はぁ、あったかい。美味しい』
「母さんが、やかんに作ってくれてた」
『今日は日曜だけどお出かけ?』
「…うん、なんか展示見にいくって。美術館」
『へぇ…素敵』
「…興味ある?」
『綺麗なものはなんでも見たい。博物館とかも、自分の中のページが増えるみたいで好き』
「…へぇ。…こんど行こっか」
『…うん、いこ』
デートっぽいとこに行ったことないし
デートっぽいとこに行きたいわけじゃないけど
美術館にいくのはいいなって思った。なんとなく。
…博物館もたしかに、良い。
「…日に焼けたね」
『…うん、南の方は特にあったかいから。
髪の毛もちょっと痛んでるかも』
「…髪の毛も?」
『…ん?あ、いや日焼けはそれなりにダメージがあるらしいから。
あとからいろいろやってる。…一応ね。まぁいいよこれはっ』
「…うん、いつも綺麗だなって思ってた」
『…え?』
「日焼けしてても、なんか透明感あって瑞々しくて。
いいよね。好きだよ」
『…え?どうしたの研磨くん』
「…別にどうも。…思ってること言っただけ」
穂波は太陽が好きで自然体だし
日焼けしてることに引目とかは感じてないのは分かってるんだけど、
ダメージ、とか傷んでるって言葉を聞いて
なんか、伝えたくなってた。
『…………』
すごく恥ずかしそうにしてる。
…かわい