第2章 芽生え
ー研磨sideー
…一緒に行くって言ったけど、車両違うと会えないよな。
ホームで穂波さんにメールをしておいた。
【研磨くん、おはよう!五両目ね。ありがとう♡】
少し遅れて返事が来た。
〇〇駅で穂波さんは乗ってきたけど、
身体の大きな男に絡まれてるみたいだった。
「…研磨、行ってこいよ」
こういう時、クロみたいに上背があればもう少し強気でいけるんだろうか。
でも周りに人もいるし、普通に行けば、手、離すだろうと思って、
周りに聞こえるようちょっとだけ大きな声で話しかけたら
男はすんなりと手を離した。
…ほっ。
思わず穂波さんの手を握って歩く。
大丈夫みたいでよかった。
今日も、海に行ってきたのかな、濡れた髪の毛を頭の上でお団子にしてる。
「無事で何より。今日もサーフ帰り?抱かれてきた?笑」
『うん、抱かれてきた!
でもやっぱりジリジリーってあつーい太陽に焼かれて、
あーもうダメー!って海に入るときが一番、地球とセック…』
クロが、穂波さんの口を指で押さえた。
なんて言おうと思ったんだろう…
あれだよね。うん。
言いたかったことは、暑いなかやっと入る海が一番気持ちいいってことかな…
穂波さんって全然読めない。読めないのに、安心する。
…おもしろいな。
改札を出たところで、
穂波さんが顔を真っ赤にして
『ごめん!わたし、大きな声であけすけと!公共の場で!』
と言った。
クロはずっと笑いを堪えてたみたいで、ぷはぁ!っと腹を抱えて笑い出した。
「ちょー、おもしれぇ。で、続き聞かせてー?」
『クロさん、もういいの!でも、止めてくれてありがとう』
「で、何を言おうとしてたの?」
『っ!研磨くん…』
「気持ち良いってこと?朝に入る海も気持ち良いけど、日中の太陽を受けて入る海は、気持ちよさが違うってこと?」
(…ここで研磨の分析力とSっ気が出た!笑)
『…うーん。早朝の海は格別。普通に入る分には、夜の海も最高。
けど、なんだろ…もう、だめー!っていう気持ちよさは、やっぱり日差しが強くてあっつーいってときなの』
(こっちもこっちでまた恥ずかしげもなく、すごいこと言ってら)