第8章 栗と飴玉
ー研磨sideー
「…あの、弧爪くん」
穂波が少し歩いてくるっていうので
部室の前に座って1人でゲームしてたら
名前を呼びかけられた。
背の小さな知らない子で、
虎と同じクラスだって言ってた。
「…弧爪くんの事が好きです。
…昨日の体育館でのステージで、
運天さんと□先輩が話していることを聞いて、
想ってるだけじゃなくて伝えようと思ったの。
それだけです。好きです。
迷惑なこと伝えてごめんなさい。」
「…ん。ありがと。」
………なんて答えたらいいか分かんない。
穂波みたいには喋れないし…
ていうか、穂波のこと好きだな、おれ。
穂波がおれの、なんじゃなくて
おれが穂波の、なのかも…
そんなふうに考えてたら
いつの間にかその子は居なくなってて。
すこししてから穂波が隣に来た。
ここに居てもな、また誰か来るし。
2人でいたい。
「ん。穂波、もう帰ろ。てか、どっか行こ」
まだ午後の部が始まったばかりだったけど学校をでて
しばらく河川敷で過ごした。
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「…穂波、そろそろ行こっか。」
文化祭帰りの生徒たちでがやがやし始める前に
電車に乗っちゃいたいと思った。
『…うち、来る?』
「うち来る?」
『「…ふふ」』
『どっちでもいいよ、一緒にいれるなら』
「…ん。じゃあ、久々に穂波ん家行く」
『…うん。今日ね、夕飯一人の予定だったから…研磨くん食べてく?』
「…ん。食べてく。」
…やった。穂波のご飯。
忘れないうちに家に連絡をいれとく。