第8章 栗と飴玉
「ちょっと座ろ」
河川敷の階段に並んで腰を下ろす
「…でも、穂波の気持ちはわかったよ。
目の前にいる子が、想いを伝えてくれてるのに、
穂波に会いたくて仕方なくなった」
『…………』
もう、ほんとにいつも…ずるい
『…ん』
ふっと唇が重なる。
肩に添えられた手も、唇もすごく優しい。
「…穂波はおれの」
綺麗な目で真っ直ぐ見つめて、そんなこと…
「おれは穂波の」
そう言ってまた唇が触れる
さっきより少しだけ、吸い付くような…
「それがわかった」
『…ん』
わたしは研磨くんの、って思うことはいっぱいあったけど
研磨くんがわたしの、だなんて考えたこともなかった
でも、研磨くんが言ってる意味は多分わかる
身体が繋がってるときとか
一緒にいるときも思うけど
離れてるときとか…誰かに想いを告げられた時とかに
あぁわたしの心はもう研磨くんのものなんだって強く体感する
研磨くんはきっと、それを言ってくれてるんだ…
なんていう。なんという。
幸せなことなんだろ…
『…ほわほわ』
「? ……ん。ほわほわ」
それから研磨くんはゲームを開いて
わたしは小説を開いて
しばらく河川敷で過ごした
河川敷は風がいっそう冷たいけれど、
不思議と寒さは気にならず
しばし本の世界にぼっとうする