第8章 栗と飴玉
立ち上がって伸びをしてフェンスの向こうを覗く
研磨くんはゲームをしてる
ひゃあ、高いとこから見下ろすの苦手だ。
ひやっとする 腰がすくむ
でもどうして一度覗いてみたくなるんだろ
周平やカズくんにはこの感覚はないんだろうな
バートでドロップインするの、わたしは未だ怖くてできないのだ
…はっ 来週の日曜日、バートもさせられるかな
スパルタカズくん……
デートどころじゃないかも……
※パイプって 乀ノ こんな形になってるとこのことで、
上から見るとすごい角度のとこを滑り降りて始めるんですが、そのことについて考えています※
ま、いいや。なるようになる。
上から人の波を見てると、しみじみ盛り上がってるなぁと思う
研磨くんの隣に戻って
こてん、と上を向いて寝転がる
高い高い秋の空
空に手をかざす
秋の空っていい。
もう冬が来るんだよーって
きゅうんとする。
冬も大好きだけど、冬が来るって思うと
心が勝手にきゅううんとする。
11月後半の今は、空気も冷たくって
深く息をすると肺がツンとする。
それもいっそう心のきゅうんを加速させる。
あぐらをかいてゲームをしてる研磨くんの姿を
下からぼんやりと眺める
綺麗な目。綺麗な指。さらさらの黒い髪。
引き寄せられてく
身体をすこし起こし 手をついて
ゲームと研磨くんの間に顔を滑り込ませ
唇を奪う
優しく吸い付くように味わって ゆっくりと唇を離す
『…メロンの味』
飴を舐めてたみたいで、メロンの香りがした
………。
研磨くんはゲームから片手を離して
顎に手を伸ばし
今度は唇を奪われる
舌がねじ込まれ
絡みあう舌の波の中を泳ぐように
小さなまぁるいものが口内を転げ回る
「…メロンソーダ」
わたしの口の中に転がり込んできたまぁるい粒は
確かにすこししゅわっとした味で
『…メロンソーダ』
なんとかそう呟いて
言葉を発してみたけど…
研磨くん…
いまの…反則です。
どきどきしてちょっと熱いよ…