第7章 アイテム
土曜は一日、日曜は午後の半日が部活って言ってたはず。
土曜日は同じ駅であるスタジオで初レッスンの日で、
レッスン後に会いに来ようって思ってた。
当日も会えるなんて。
しかも、お家にお呼ばれしてもらえるなんて、嬉しい。
『…土曜日さ、レッスンの後、部活見にきてもいいかな』
「…ん?土曜。そっか、教える方。…うん、おいで」
『…ん』
研磨くんはゲームの画面に向いていた顔をこちらに傾け
少し、笑った。
…研磨くんの笑顔の破壊力ってすごい。
一緒にいる時間が増えても、いつもみられるものじゃなくって。
捕われてしまう
その隙を突くかのように もう一度唇が重なる。
少しずつ頭の向きを変えては、啄むように優しいキスをくれる。
「アイテム乱用〜!」
2階からクロさんの声が聞こえた。
自然と唇が離れる
「…………」
『…アイテム?』
「………いいよ、気にしないで」
思えば今は中庭にいて、
こんなとこで研磨くんの方からキスをしてくるなんて初めて。
………キュン。
「穂波といると、なんか…」
『…?』
「…自分にはできないはずなことを、平気でしてる自分がいる」
『………』
「………ま、いっか」
掃除の鐘はまだなってなかったけど、
なんとなく2人は空のお弁当を持って立ち上がり、歩き出す。
教室に遠回りになる方の道を行く
途中どちらともなく手を繋いで、ゆっくりと歩く。
校内を散歩してるみたい。
なんでもないような…
すごく特別な時間。