第7章 アイテム
ー穂波sideー
「穂波、あのさ…ぇっと…」
10月2週目の火曜日、中庭で食べ終えたお弁当を仕舞いながら
研磨くんが何か言おうとしてる。
『ん?』
「今週の日曜なんだけど…その………」
研磨くんの誕生日だ…
「…うちに夕飯食べにこない?………親が誘ってって…」
………。
『…うん、もちろん。』
………どうしよう。すごく嬉しい。
「…ん。…じゃあ、また時間とか、伝えるね」
『……ん。』
「…え、ちょっと。………なんで泣いてるの」
『………』
「…穂波?こっち、向いて?」
嬉しくて、ぽろぽろと涙が出てきてしまって
前を向いて静かに泣いていたのだけど…
少し困ったような優しい顔で
こちらを覗き込んでくる研磨くん。
手を頬に伸ばして、そっと指で涙を拭いてくれる。
『…嬉し涙』
「…ん(…?)」
こちらを覗き込んでいた顔がすっと近付いて、唇が塞がれ
優しく、啄むように数回キスを落としてくれる。
『………ん』
「…ん」
なんだか妙に静かになっちゃって、
でも研磨くんもわたしも無理に静寂を破ろうとしないので、
そのまま静かな時間が流れる。
こういうとこがまた、
研磨くんといて安心するところだったりする。