第2章 芽生え
…なんで、こんなに風に、おれに触れるの?
…どきどきする。いやじゃない。
すごくあったかい気持ちにもなる。
…おれは、この子のことをもっと… 知りたい。
『ねぇ、研磨くん!』
おれの左手に手を添えたまま彼女はいう
『すごいこと発見しちゃった。
わたし左利きだから、ほら!こうやって』
ブロッコリーを箸でつまんで口に運ぶ。
おれの手をきゅっと握って、
『手を繋ぎながら、食べれる!』
「………ほんとだ、ね。」
おれも、最後にとっておいたプチトマトを、右手でつまんで口に入れた。
『あはは!それ箸いらないやつだったね!
別に左手でも食べれるやつ!』
弁当をしまう流れで、手は離れた。
…なんでおれ、こんな恥ずかしいこと、
なんの躊躇もなくやってんだろ…
「…穂波さん、…今日…一緒に帰る?」
『うん!帰ろ!』
「…うん。…じゃ、おれちょっと、あっち行ってくる。」
廊下にまだ、クロたちがいるのを確認して言った。
『うん!ねぇ、昼休みの間、研磨くんの席に座っててもいい?
窓際の席、好き。』
「…え、うん。いいよ。…じゃ」
『いってらっしゃ〜い』
クロたちのとこに行く途中、
一度、おれの席を振り返ってみた。
軽やかに、跳ねるように前の席から、
ふわっと、すとんっと、おれの席に移る穂波さんがいた。
「かわいいなぁ」
(!)
「かわいくてかわいくて仕方ないって顔してるぞ」
「…別に。してないし。」
「してる」
「してない。」
「研磨!話聞かせろー!このこの〜」
夜久くんが肩に手をかけてきた。
「…何、話って。…頭ぐりぐりするのやめて。」
「何って何って〜 手繋いでなかった〜??」
「ふえっ!手っ!?」
「…なんでみんなでここにいるの」
「クロがマネージャー探しに行こうって言うから来てみたら、
研磨が女子と一緒に昼メシ食っててびっくり!
何から聞いていいのかわかんねぇ!」
「クロさんがマネージャー第一候補って言ってたのはあの子っすか?」
穂波さんは窓の外を、ぼーっとみてる。
「…多分、やらないと思う。さっき、バスケ部の誘い断ってた」
「研磨がいるバレー部ならどうだろねぇ」