第6章 層
一段一段が幅広だから、角度は急じゃないけど
それだけ距離がある。
『カズくん、ここ飛んだことあるの?』
「…前、父さんと来た時」
そっか、もうこんなのもしてるのか。
………好きじゃなきゃスケボーなんてできない。
って周平言ってたな。ほんとだよね。
好きじゃなきゃこんなのしない。
「…これでさ、おれがバリアルヒールフリップ成功したらさ、お願い一つ聞いてよ」
130cmくらいの9歳の男の子に、
こんなかっこいいことを言われてしまうとは…
『………お願いって?』
「…んー今言わなきゃなの?」
『…だって、成功した後から断るなんて出来ないし』
「…パークデートしよ。1日。穂波の弁当付き」
『………ふふ。…喜んで!』
バリアルヒールフリップってなんて言葉にすればいいんだろう…
飛んでるときにデッキを裏表に一回転&横回転もさせて着地…するやつ。
かっこいいやつ。小学3年生がまさかステアでやるなんて思わないやつ。
うまいのは百も承知だけど、
技名を言われないと何してるかとかわかんないことの方が多いし…
ここでそんなことをやるなんて。
そんなの成功したら、お弁当作るに決まってる!
もちろんこれはカズくんだからで、同世代の子とかだったらデートは引き受けれないけど…
カズくんが階段の上に行くと、
ヘルメットも膝のガードもつけずにここから跳ぶ気?みたいな空気感。
1回目、デッキは綺麗にキャッチできたけど着地で失敗。
2回目、デッキのキャッチに失敗して転ぶ
うまーく受け身?をとって
ダメージを最小にするけどでも、痛そう。
わたしと練習するときは、教えてくれることも多かったし、
そんなにチャレンジをしてなかったんだよな、と分かってはいたけどしみじみ。
だってこんな風に失敗するの最近見てなかったから。
でも、3回目で成功した。
みーんな見ててみーんなの拍手と歓声が沸く。
スケボーの練習で好きなところ。
誰かがトリックに挑戦して、失敗するのもみて、
成功したときにみんなで喜ぶところ。
ハイタッチしにくるひとを軽くかわして、こちらに向かってくる。
(カズくんのコミュ力……クールすぎる……)
「みた?」
『見たよぅ!3回でできるなんて!』