第6章 層
ー穂波sideー
「穂波ちゃん、今日研磨部室の片付けと掃除当番だから、俺先帰るネ」
クロさんが部室から出てきて言う。
後に続いて他のみんなも出てくる。
『へぇ、そんなのあったんだ。みんな、お疲れさまです。
山本くん、お腹、お大事にね?』
山本「…はうぁっ!………」
『………?』
夜久「今日はありがとうね〜 またよろしく〜!」
海「気をつけて帰ってな。お疲れさま。」
クロ「じゃ、研磨のことよろしく〜 まだ汗かいた服着たままぼけっとしてたよ〜」
『…!』
少し慌てたわたしの顔を福永くんが覗いて、
多分、バイバイのジェスチャーをして去っていった。
『バイバイ、福永くん』
福永くんと、少し距離が縮んだのは結構な嬉しい収穫かも。
だって、おもしろい。
「…穂波?部室空いた。入ったら?」
9月も終盤で夜は風が涼しい。
『…ん。もうすっかり秋だね』
「…うん」
『研磨くん、お疲れさま』
「…ん。」
みんな散らかす人じゃなさそうだし、片付いているように見える部室。
研磨くんはほうきで床を掃いている。
長袖のジャージを羽織って、ズボンは練習の時のままだ。
『わたしも、何かする。…当番なんてあったんだね』
「…いや、ないよ。海くんとか福永とかちょこちょこやってくれてる」
『…うん、片付いてるもんね』
研磨くんが塵取りに集めたゴミをゴミ箱に入れる。
結構いっぱいになってるし、まとめといて、新しい袋をセットしておく。
長ズボンのジャージに履き替えた研磨くんが、靴を取り出す。
「ねぇ、穂波」
『ん?』
「キス、しよっか」
『…ん。』
顎に手を添えて優しい口づけをくれる。
「おれ今日、やきもちやいたのかな」
そう言って、今度は強く唇を奪われる。
舌が割って入ってきて、わたしもそれに応えるように絡める。
足が後ろに下がり、部室のドアに押しつけられるようなかたちで 口づけを交わす
熱く、強く、求められて身体も熱を帯びて…
『……んン…………ハァ…』
息をするときに声が溢れる
「穂波はおれの。だよね」
そんなこと今言われたらキスだけでもトロけちゃいそう…