第6章 層
「…え」
『……はっ』
「お前らほんとたち悪い。掃除の時間始まってるから。玄関も、人、戻ってるから」
正面玄関と正門の間で、おれらはキスしてたらしい。
本当に場所を忘れてた。
穂波が腕を回してきたときは ここでか、って思ったんだけど。
玄関をみると、掃除に来てる生徒たちが遠慮がちにこっちをみたり
みてないフリをしたり…
「俺、あのあと部室に用があって行っててさ。
掃除の鐘がなったし戻ろうとしたら、これだもん。
ここは南米デスカ?アツイアツイ〜」
「…ごめん」
「いや、謝られても!むしろ人だかりができる前に止めたことに…」
『夜久さん、ありがとう』
「…ん。」
「…ん。じゃねぇよ!穂波ちゃん、まじ、周り見えなくなる時あるんだね。
変な気起こされないように気を付けないとだよ」
『…?変な気?研磨くんが?』
「………」
「いや研磨はいいんだけど、見てて興奮してきちゃう人もいるかもしれないよ?
日本ではあまり見かけないからねぇ、他人のキスを目の前では」
『…はい』
「ははっ まー良かった。先生にもまだ見られてなさそうだし
お前ら絶対、風紀委員に目ぇつけられてっぞ〜w」
『…あ、お弁当。…研磨くん全部食べた?』
「…あ、おれも。広げたままだ」
夜久くんと別れて、教室に行くと弁当箱は蓋を閉めて、
包みの上に並んで置かれていた。
それぞれ片付けて掃除に遅れて行った。
おれはどうせクラスメイトと喋らないし、
こそっと遅れて行って しらっと空いてるとこで掃除をするだけだから何でもない。
めんどくさく絡んでくるのはバレー部だけだから、
こういうときはラクだな…
絡まれるのは誰からでもいつだって面倒だけど…