第6章 層
人の合間をぬって覗いてみると、
穂波はその他校のやつの方へ歩いて行って………抱きついた。
「え、ちょっと…なになに」
「…相手もしっかりホールドしてる」
「帰ってきた、とか言ってたよね?」
「ハグじゃない?なんかあの、海外の人がよくやる」
…おれもそう思う。
BBQのとき、いろんな人とハグしてた。
ただ、
「でもなんか、強く長くない?」
…おれも、そう思う。
それからその生徒の手がするするって下に降りていく。
…こんなとこで、なんのつもり?
穂波はその手をパシッと叩いて身体を離す。
ツトムくん、みたいな感じかな。
ノリが軽くて…でもツトムくんはあんな風に触らない。
穂波の表情はほとんど見えないけど、親しげに喋ってるのはわかる。
「お、研磨もさすがに来てんだ」
「二階まで大騒ぎだよ」
クロと夜久くんが隣に来る。
クロ「誰?」
研磨「…さぁ………海外に行ってた親しい友達ってとこじゃない」
クロ「冷静だねェ」
研磨「………いや、ちょっと怒ってる」
クロ「お」
研磨「………触ろうとするのは、なし」
夜久「穂波ちゃん、ペシっと払ってたね。気持ちいい速さ」
クロたちと話していると、
穂波が玄関の方を向いて歩き出した。
人の数に少し驚いたような表情をして、それからキョロキョロし出す。
クロ「穂波ちゃ〜ん!研磨探してる?」
クロの声にこちらを向いて走り寄ってくる。
『研磨くん、ちょっといい?』
「…ん」
穂波はおれの手を取って向こうに連れて行く。
…紹介するつもりなんだな。こういうとこ。
あっさりしてて、ほんと心配することが何もない。
穂波の内側には。
問題はあいつ。
穂波のお尻触ろうとしたやつ。