第39章 scenes
ー穂波sideー
「おれ、さ…」
いちごを手に持って、小さく指でくるくるしながら研磨くんが話し出す。
「この2週間、結構いろいろ考えた。
なんだろ、ほわほわしたことは全然考えれなかったけど、
ほんといろいろ、詰めて考えた」
『うん』
「…楽しかった」
『………』
「で、んと… 今朝、生理きたって聞いて、そっか…ってなった」
『………』
「多分ちょっと、ショックだったのかな」
『…ん』
「でも今、そういうのもなくなった。
ちょっと、引きずってた感じのが、もうなくなった」
『………』
「穂波がいればそれでいいや、おれ」
『………』
「なんかこれ穂波も言ってた気がするけど…
おれもそう思った。穂波がいてくれれば、全部あるなって思った」
『………』
「…それだけ」
『…ん』
「あ、あと。 …すきだよ、穂波」
『…ん』
「2週間前に言ったことも、それから今朝まで考えたことも、変わんない。
何があっても、何がなくても、穂波のこと大事にする」
『…ん』
そんなこと、もう、よーくわかってる。
身に染みて、わかってる。
でも、言葉にしてもらえるのも嬉しい。
「まぁいいや …あんま喋るとよくわかんなくなる」
『…笑 うん』
「最後の一つ、どうやって食べる?」
『…ん?』
「いちご」
『あ、研磨くんどうぞ』
「…ん、じゃあ」
研磨くんは最後の一粒を手に取り、ヘタをとる。
ヘタ側を口に咥えてそれから…
顔を傾けながら近づいてくる
「…ん」
その声がまるで合図のようになって、わたしは小さく口を開く。
それから研磨くんの口から半分出てるいちごを咥え歯を立てる。
じゅわぁと溢れる果汁が2人の唇、顎へと伝い落ちていく。
『ふふっ』
「…ふ」
額を合わせ、何だかおかしくてにやにやしながら、
口の中のいちごを飲み込むとまた、どちらともなく唇を重ねる。