第39章 scenes
…いちごの味。
ぶわーと一度強い風が吹けば
桜の花びらがここまでひらひらと舞い散ってくる。
「…花びらついてる」
『研磨くんも』
「ねぇ穂波」
『…ん?』
「まだ、足りない」
そう言って顎をくいっとされ、再び唇が重なる。
爽やかで 甘くて とろっとろになる 研磨くんのキス。
すきが溢れて仕方がない。
何があっても、何がなくても。
きっとこれからもずっと変わらない、この気持ち。
「…ん」
『まだ、足りない』
「…笑」
ふっと唇が離れたから、
もっととせがむと小さく笑ってまた口付けてくれる。
「あーチューしてるー!」
「 ! 」
『 ! 』
ボールを持った男の子と、
葉っぱと桜の花を手にした女の子。
…なんだかこれ、前にもあったような
研磨くんと顔を見合わせ ふっと笑いあう。
男の子の少し後ろで1、2歳くらいの女の子が転んで泣き出した。
男の子は振り返って走っていく。
葉っぱを手に持った女の子はまだじっとわたしたちを見てる。
『…一緒に葉っぱ探す? わたしもね、葉っぱ集めるのすき』
コクリ、小さく頷いたので一緒に葉っぱを探し歩く。
研磨くんは、シートの上のお弁当箱を片付けて、ゲームを始める。
明日から4月。
高校最後の一年が始まる。
どんな毎日になるかな。
何があっても、何がなくても。
研磨くんが研磨くんのままでいてくれたら、
それだけでわたしはしあわせ。
願わくば、これからもずっとずっとすぐ傍にいられたら。
ーfin