第39章 scenes
ー研磨sideー
3月31日(日)
オフ。
あれから2週間とちょっと。
今思うと不思議な時間だった。
あるのかないのかわからないものに
心を持っていかれてる感じというか。
でもそれはふわふわしたものじゃなくて、
現実をまっすぐみつめさせる地に足のついたもの。
…でありながら、やっぱり神聖というか、
よくわからない力強いもの。
朝、自転車で穂波ん家まで行って、
それから今朝生理が来たって聞いた。
なんていうか、すこし喪失感があったのは否定しない。
安堵は不思議なくらいなかった。
でもじゃあもう一回しようとかそんな馬鹿なことは考えなくって。
もちろん、それなら今できることをちゃんとしようっていう感じなんだけど。
今日は石神井公園に来てる。
桜がちょうど満開だ。綺麗。
去年、また穂波と見たいって思ったな。って。
季節が繰り返されることが、
ただそんな当たり前のことが、
穂波といると当たり前じゃなくなる。
なんていうか… 有り難い。
ふらふら歩いて、桜の下は人がいっぱいだからちょっと離れたとこにシートを敷いて。
弁当はまだもうちょっと後でいっか、なんて言いながら、
おれはゲームを取り出す。 穂波は手帳とペン。
『ねぇ、研磨くん』
「…ん?」
手帳に何か書きながらおれの名前を呼ぶ。
それから目線はそこに落としたまま次の言葉が続く
『…わたしね、いつも生理が来ると嬉しいの』
「………」
『あー、生理きた。って。いつかお母さんになれるかなって。
もうずっと、初めて生理が来た時からずっと、思ってる』
「………」
『なんていうか、お母さんになるための準備は整ってますよ!って身体が言ってくれてる気がして。
それだけでなれるわけじゃないんだろうけどさ』
「………」
『でも今日、初めて複雑だった』
「………」
『初めて、ちょっと悲しかった』
「…ん」
『まだがきんちょのくせにね、一丁前にそんな気持ちになったよ』
…ん。おれも