第39章 scenes
ー穂波sideー
研磨くんがすごく冷静に、向き合ってくれてる。
すごいな、研磨くん。
謝られてないことが、また、なんていうか…
まだまだ子どもなくせに不謹慎かもしれないけど、嬉しい。
だってわたしも当事者だし、2人で忘れてたし、
それに挿入したままキスがしたいと引き止めたのはわたしだ。
むしろわたしの方が謝るべきだ。
でもきっと研磨くんは考えがあって、その一言を口にしてないんだと思う。
だから… わたしもすっきりしたくて言う一言にしてしまわぬよう、自制する。
…それにさっきのキスは、なんていうか……
思い込みかもしれないけど、
優しくって、すごい包容力があって。
でも同時にすごく何だろ 揺るがない何かを伝えられているような気になった。
「ちょっと、携帯みるね。調べよう。 …ていうか何か知ってる?穂波」
『…ん?』
「いや、違うな… いや、そうか」
『………』
「全部一緒に考えればいいから… えっとおれは今、こういう場合っていうか、
なんだろレイプとか?でこういうことがあった場合に、
妊娠しないようにできる方法とかあるのかなって調べたいと思った。
でもそれはおれがそうしたいっていう意味ではなくて。
なんていうか、選択肢を広げておこうと思っただけ」
『…ん。 えっと、よくは知らないけどアフターピルっていうのがあるはずだよ』
「アフターピル… 経口の薬ってこと?
…じゃあ、身体の負担はまだ軽いのかな。副作用とかあるのかな」
『どうだろう、調べてみようか』
「…いや待って。とりあえずそれがあるってことはわかったから…
んと、おれはもし赤ちゃんできても、どうにかする。
って言っても、まだ全然説得力ないけど……」
『うん、わたしも。 もしやってきてくれたなら、産む以外に選択肢はないよ』
「…うん。…じゃあまず今考えるべきは、
とりあえず次の生理が来るまで待つか、アフターピルを飲むかってことだよね」
『………』
なんか、泣きそう。
何でこんなに落ち着いてるの。
落ち着いてて、非情な方じゃなくて。
落ち着いてて、真っ直ぐで、あったかい。