第38章 シロワニ
ー穂波sideー
「穂波さんあのっ」
ピアノくんが追いかけてきた
「さっきのマジやばかったっす。俺、イっちゃうかと思った」
『…? あぁ、オーガズム?』
「そうそれ。 最高の快楽。
…あーこのあとトイレで、とか誘いたいけど、俺も研磨さんのことが好きだから無理」
『…ふふっ わたしもすっごく気持ちよかった。
やっぱそうだよね、セックスしてる感じになるよね。
目を合わせて、波とかうねりを感じながら一緒に作っていくの』
「…すげー明け透け 笑」
『あ、ごめん。 品がないね』
「いやそうでもないけど、誘われてるみたい。誤解招きそうな話は英語でしてもいいけど」
『…ダイジョーブ。誤解が生まれたら解けばいいだけ』
「おー、すげー信頼関係 あ、でさ…」
『うん ていうか、どこかに住んでたの?』
「ニューヨークで生まれた。中一から日本」
『おー、ニューヨーク。いいねぇ ごめんそれで何だった?』
「卒業式の後でさ、ゲリラライブ?みたいのしようって話してんの。
アフターパーティーじゃないけど。文化祭の実行委員と組んでさ、ジャーン!みたいな。
3年へのサプライズみたいな」
『わお、それおもしろそう』
「俺らと一緒にやんない? 今回は歌の方で」
『えー楽しそう。参加していいならするするー』
「楽器は弾ける?」
『ギターとウクレレなら少々』
「オーケー、じゃあそれで進めてまた… 話に行くわ」
『オーケー、じゃ…』
わー楽しそう。
ゲリラライブだってなにそれなにそれ。
絶対楽しいー!
ばっと研磨くんの方を振り向くと、クロさんたちも一緒に歩いてて。
なんだかほっこり久々に見た。
そして、最後かな。廊下で制服で。
卒業式で見れるかな。
振り返ったまま立ち止まると
研磨くんが少しだけ歩みを早めてわたしの元まで来てくれる。
ぎゅうと抱きつきキスをして
手を繋いで教室まで。
行ってみれば教室は空っぽで、今日の五限は体育だったと気付く。
着替えて見学か、着替えず見学か、はたまたほんとに保健室か…
あれ、やっぱり音楽室?
にやり。
手を繋いだまま焼きマシュマロくんたちの元へ帰ることにする。
最初で最後の研磨くんとのサボり。
バースデーガールの小さな暴挙。