第38章 シロワニ
ー研磨sideー
結局あの後、五限をサボった。
キャプテンとして…って虎に叱られたけど、
猫又先生は「わかってんだろー」って感じだし、
別におれがこれからもサボり続けるわけじゃないってのもわかってるって感じだった。
たまにはいいんじゃねぇか、って。
母さんにはまぁ、普通にちょっと叱られたけど。
穂波のことになると甘い。
嫁に甘いのって大丈夫?って、
今日うちに夕飯食べに来てたクロが言って、
母さんが、うちは嫁に甘いでいいの。って普通に答えて。
普通に嫁になっちゃってるから、なんかもう何もいう気起きなかった。
音楽室での時間はおもしろかった。
穂波は踊ったり、適当に歌ったり、
それからギターを借りたり。
音楽教師が出してきた楽器を触ったり。
それから、カホン叩いてるやつがホーミーってのやり出して、
それを穂波もできるようになりたい!とか言って、他のやつらも一緒に練習して。
みんなで謎の音を出してるからなんかの宗教みたいって笑いこけたりして。
ホーミーってモンゴルの倍音唱法らしくて。
低い音と高い音が同時に喉から出る。
カホンのやつはうまくて、メロディとかまで奏でてた。
普通にすごい。なんか聞いててふわふわする感じ。
穂波は最後の方にやっと高い音が出るようになって喜んでた。
おれはなんでかトライアングル持たされて、
合図されたらたまにチーンって鳴らすんだけど、
意味わかんなくって笑えた。みんなも笑ってたし。
文化祭で思ったけど、音楽ってすごいんだな、と思った。
穂波は食事や一杯の飲みものがすごいって言うけど、それと似てる。
よくわかんないけど一つになる感じするし、
結局は人次第なんだろうけど、
この焼きマシュマロたちは、おれみたいに楽器とかできないやつも置いてけぼりにしない。
かと言って無理強いもしない。
だからいろいろちょうどよかった。
それに、楽しそうな穂波を見てるだけでおれは、嬉しい。
誕生日、思わぬ展開になったけどよかったなって思う。
ピアスも似合ってたし、一緒に祝えたし、過ごせたし。
穂波、いっぱい笑ってたし。
それだけで、よくわかんないけど、ありがとって思う。