第38章 シロワニ
ー穂波sideー
研磨くんの席でお弁当を食べる。
青椒肉絲、卵焼き、豆苗とツナの和物、人参のマリネ、
ひじきと紫玉ねぎのサラダ、お漬物、いちご。
「ねぇ穂波、弁当食べたらさ。デートしよっか」
『へっ』
研磨くんにデートに誘われたの、初めて。
デートはしてるし、どっか行こうとか、
美術館とか公園とか水族館とか行こうって言ってくれるけど、
デートしよっか は初めて。
ああああああ
『うん。 ココア買いに行く?』
「…んー、ココアは今はいいや。 とりあえず歩こ」
『…ん。歩く。 歩く歩く』
「…ん、弁当美味しいよ。ありがとう」
・
・
・
研磨くんと手を繋いで校内をふらふらと歩く。
いつもは来ないあたりまできた。
特別教室… 音楽室。
わたしも研磨くんも音楽はとってないからほとんど来たことない。
『…なんか音聞こえるね』
「だね、結構うまい?」
『…わかんないけどそんな気がする。ピアノとギターと…
これなに?カホン?打楽器の音がする』
「カホン?」
『カホン』
椅子みたいに座って叩く、箱みたいな打楽器。
誘われるように音楽室に足が向かう。
防音になってるはずの音楽室から音が漏れていたのは、
音楽準備室?音楽資料室?の扉も窓も全開になってるからだった。
換気中かな。
音楽室の扉を開けると…
ぱぁん ぱぁん ぱぁん!!!
弾けるようなクラッカーの音と
降ってくる紙吹雪とテープ。
「「「ハッピー バースデー!!!」」」
驚いて咄嗟に瞑った目を開くと…
クロさん、夜久さん、海さん。久しぶりの3人。
山本くん、福永くん、犬岡くん、芝山くん、リエーフくんに球彦くん。
新しいマネージャーの一年生2人。
それから焼きマシュマロくんたち。
バンドの3人に加えてストーブのとこで話した2人もいる。
そして隣には研磨くん。
研磨くんは自分の髪や肩についた紙吹雪を取ってる。
『あ… ありがとう………』
泣くな泣くな…
笑顔で…