第38章 シロワニ
ー研磨sideー
朝練終えて着替えて、
歩きながら携帯見るとクロからメール。
【電車で穂波ちゃんに遭遇。
駅から別行動にしたからバレてねーよ。今、店に向かってる】
ツトムくんのとこのカフェにケーキを頼んだ。
バレー部からってことで。
2月の常温で数時間大丈夫なやつ。
ナッツ系かドライフルーツ系かチョコ系って聞かれて、
この間バレンタインだったし、ナッツかドライフルーツでってお願いした。
…ていうかクロがこの時間に店に向かってるってことは
穂波結構ギリギリかな。
そんなことを思いながら教室まで階段を登って
教室への廊下を歩いてると
ぼすん って後ろから思い切り抱きつかれた。
「わ」
『ごめん、でも、会いたくて会いたくて。背中見つけたから』
「…ん」
ピアス、どのタイミングでどこで渡そうって思って。
机に置いてくることにした。 …それでこんなことになってるのかな。
『研磨くん、プレゼントありがとう。 着けたよ。 どうかな?』
「…ん、まず離してくれないと見れない」
後ろからぎゅうって抱きついたまま、どうかなって言われても。
穂波の腕の力がすっと抜けて、
そのタイミングで身体を穂波の方に向ける。
長い髪の毛を耳にそっとかけると、小さなピアス。
小さいけど、シンプルだけど、存在感があって。
綺麗な穂波にぴったりだ。
飾らなくても綺麗だから、なんていうか…
「…ん、綺麗。 似合ってる。 すきだよ、穂波」
『…ん』
朝の廊下で思い切り抱きついてきて、どうかなって聞いて。
そのくせおれの言葉に急にもじもじする。
「行こっか」
『…どこに?』
「…え?笑 どこ行きたいの?」
『えっ んと…』
「いやちょっと待って、今はごめん。
言ってくれても連れてってあげれないから。教室でもいい?」
『…あっ あ、そっか。 うん、教室、行く』
ここがどこか
いまがいつか
穂波はたまに本当にそういうことが吹っ飛んじゃうらしい。
おもしろいな、って思う。
それから、かわいいなって。