第38章 シロワニ
ー研磨sideー
朝、支度してていないだろうと思ってた穂波が
まだ、隣にいた。
…これ嬉しいんだよな。
もぞもぞと肩とか頭を動かして穂波の見てる方が見えるように
穂波の頭の上に頭を乗せる
自分の肩に体重をかけるようにして
昨日言ってた染織家の本なんだろう。
ちょうど梅林とか梅の枝で染めたことについての項だった。
ところどころ、詩的というか…
抽象的な表現がある。
綺麗な文章だと思う。
前だったら、え、なにこのふわっとした表現。って思ってたかもしれないけど。
今はなんか、なんとなくわかるし、すごい親しみを感じる。
それはおれ自身に直結する親近感ではもちろんなくて、
穂波っていう存在がいるからこそ感じる親近感だ。
おれが声に出して一文を読んだからか、
穂波は本をすぐには閉じず、しばらくそのまま読み進めた。
おれも、一緒に後ろから読んだ。
姿勢的に読みづらい場所とかあって、どうしても穂波より遅くなる。
穂波がページを捲るときにおれはまだ読み終えてなくて、指で遮った。
それからは穂波はおれのことを待ってくれて、
おれがページを掴むと穂波がそれを受け取って捲る。
そんな風にして区切りのいいとこまで読み終えた。
裸でくっついて布団かぶって、一冊の本を一緒に読む。
よくわかんないけどよかった。
そうしようとか、こうしようとか、
何もなくて、勝手にそうなって行った全部が心地よかった。
穂波はぱたんと本を閉じ、
すぐそばにあるおれの方を振り向きキスをする
それから身体の向きを変え、
向かい合った状態でぎゅうううと抱きついて来た。
おれも少し腕に力をいれて抱き返す。