第38章 シロワニ
ー穂波sideー
目が覚めて、しばし考える。
誕生日の朝、隣に大好きな人がいて。
起き上がっていつもの朝を過ごすのもいい。
いつもの朝って、
今日の場合は、
お父さん仕事早い時間からだから
きっとストーブはもう着いてるだろうから
熱いシャワーかお風呂に入って。
それからスープをコトコトしながら軽くストレッチして。
お弁当のおかずをさっと作って、研磨くんを起こして。
起きてお風呂が済んだら朝食を一緒に食べて、見送って…
そんな感じ。
…今ごろごろすることで削られるのは何かな。
研磨くんを見送った後の最近は勉強に充ててる時間に
お弁当を作ることになる。
ゆっくりとストレッチはできない。
お風呂にも入れないかも。
けど熱いシャワーを一緒に浴びれる。
朝食のスープは
コーンクリーム缶でさっとできるコーンポタージュ一択。
…うん、そんなに削られるってほどのものはない。
…決まり。
ごろごろしようっと。
しばし研磨くんの寝顔をじーっと見つめる。
2月、早朝。4:30。
部屋はまだまだ暗いので、間接照明をつけて。
我慢我慢、と思いながら一度だけ、
瞼にキスをした。
それから研磨くんに背を向けて寝転がり、
昨日本棚から出しておいた染織家さんの本を読む。
研磨くんの腕をわたしの腰によいしょと乗せて。
…はぁ 至福。
・
・
・
「…咲かずに切り取られた幾千もの梅の蕾を私は抱きたいと思いました」
研磨くんがもぞもぞしたなぁと思ってはいた。
でもまだ寝てるかなって思ってたら、いきなり朗読。
読んでたのかな、一緒に、少しの間。
「…なんかすごい 今となってはわかる感じがする」
『…? おはよう、研磨くん』
「…おはよ、穂波」
研磨くんも読んでるなら、もう少しこのまま読んでようっと
そうしてぱらりと一枚、めくろうとすると
研磨くんの指が乗せられる。
もうちょっと待って、ってことかな。
ほんとに読んでるんだ。
きゅん。