第38章 シロワニ
ー研磨sideー
2人で風呂に入ってる。
いつものように、おれの脚の間に穂波がすっぽりおさまって。
おれは穂波の頭や首筋、肩に顔を埋める。
「プランクトンになればいいのかなって、思った」
『…へ?』
「もし穂波が鯨になるなら」
『え?』
「そしたら穂波の身体の一部になる」
『やだよ、わたしは研磨くんと一つになはらない』
「え」
『研磨くんはダイバーになって会いにきて』
「…おれはひとなの?」
『じゃあ研磨くんも鯨になって』
「…なれるかな、おれ、鯨に」
『なれるよ、研磨くんだもん』
「………」
『さっきね、海の夢見た。夢みたいな夢だった』
「………」
『研磨くんは身体って借り物だと思う?
魂が肉体を離れるまでの…とかいうでしょ?あれ、どう思う?』
「………」
『………』
「何から借りてるんだろう」
『………』
そもそもの設定がもうちょっとわかんないと、難しいな。
「…考えとく 穂波は?そう思わないの?」
『うん、今はまだそうは思えない。
おばあちゃんやおじいちゃんはそう言うよ。宮城でも千葉でも』
「へぇ」
『だってこんなにも身体と心はしっかり繋がってるから。
研磨くんに触れる、それだけで心もこんなに満たされるんだもん』
「…うん、それはおれもわかる。
でも、心が元気でいるために身体を動かす的なあれは苦手」
穂波も結果的にそうなってるだけで、
そういう感じではないと思うんだけど。
『あー… むずかしいね。 結果的にそうなったりすることもあるし。
身体動かさなきゃ… になったら、逆にどんどん心も追い込まれたりもしそうだし
うんうん。 心と身体は一つ説も、そんなに高らかには言えないな。うん』
「…笑 でも穂波は今どう思うの? 心と身体が一つ、だとして」
『んとね、できる限りこの身体で楽しいを、気持ちいいをいっぱいして
美味しいをいっぱい食べて、いつか自然に還る時、
わたしを分解するなにかがうまいうまいと言って食べてくれるような
そんな身体を維持したいな、とかは思う』
「…笑」
『…あ、笑った』
「いや、ここにきても食べることに繋がるのかって」
まぁ、食は生に直結したことか。