第38章 シロワニ
ー研磨sideー
おれん家で餃子がでてくるときは、
母さんはビール飲んでてご飯食べないにしても、
せいぜい12、3個? 他にもなんかつまんでるし。
父さんはごはんと他のおかずと一緒にそれでもうん、12、3個とか。
おれも父さんと同じ感じで餃子は多分10個くらい。
餃子ってたしかに食卓への出し方に
それぞれの家のスタイルがあるのかもな、とか。
それは別に想像できるし、意外とかそういうんじゃなくて、
いつもそんなに量を食べない穂波が、
餃子だけそんな食べるんだ、っていうのが妙におかしくてツボに入った。
まぁそんなこんなありながら家路につく。
途中、閉店準備をしてる花屋の前を通ると呼び止められて花をもらってた。
ユキヤナギ、だって。 綺麗な名前だと思った。
花は小さくて白いのがいっぱい集まってて、かわいらしい。
穂波は花が似合う。
家に入って、おれがストーブをつけることに。
熾火は無くなってるから一から。
前は熾火があったから、ほんとにすぐ着いたけど… どうだろ。
穂波は鼻歌を歌いながら花瓶に花を生けて、
それから台所へと入っていく。
前にやったようにしてやってみるとすんなり、火がついた。
そっか、ちゃんと順番通りやって、乾いた木があって。
それから煙突が掃除されてれば、ちゃんとつくんだな、って。
よくわかんないけど…そんなこととか。
でも薪ストーブって、はい、ついた。さぁ動こうか。 ってならないな。
そのまま、じーっと火を見てたくなる。
じわじわあったまってくのを感じていたくなる。
『研磨くん、お茶飲む?』
穂波が台所から尋ねる。
「あ…」
つい、うん。って言いそうになるけど、今日は一緒に作る。
「ううん、あとでいい。 おれもなんかする」
『ほんと? 包むのだけでもいいからね、わたしはどっちでも嬉しい。
そこに研磨くんがいてくれれば』
「…ん とりあえずそっち行く」
『はーい』
とんとんとんと小気味良い音をさせながら、穂波が微笑む。