第38章 シロワニ
ー研磨sideー
『…んとね、えっとー……』
おれが前に言ったことを思い出そうとしてるのかな。
…ふ。かわいい
「…ん、わかった。 甘える、これからも」
『うん!』
穂波は少しほっとしたような顔をして、
それから綺麗に笑って頷いた。
「たこ焼き、いろいろ味あるね」
『ほんとだねぇ』
ポン酢とかネギキムチとかチーズとか明太子とか。
「ネギ塩もいいね」
『ね、ネギ塩ちょっと気になるね』
「一つ食べれる?」
『うん、食べれるけど、半分こもいいな』
「…そっか、じゃあ」
どっちがいいかな。
『あ、やっぱり一つずつ食べる』
「ん?」
『あそこのね、ソフトクリームもいいなって思ったの』
「あぁ、それで半分こか」
『うん、でもソフトクリーム半分こがいいかなって。研磨くんどう思う?』
「うん、おれもそれがいい。じゃあ、ソースとネギ塩買って半分こしよっか」
『うん!』
なんだったっけ。
それ以下でも、それ以上でもなく。
変なこと考えずに、
いま楽しそうにしてくれてる穂波をそのまま、受け止めて、
一緒に過ごせばいいんだよな。
なんであんなこと考えたんだろ…
誕生日なのに作ってもらうっていうか、
ぎりぎり一緒に作るっていうその選択肢にちょっと変なのって思ったんだ。
でも実際それがいいな。楽しいし、美味しいし、気が楽だしいいな、って。
穂波もきっと喜ぶだろうな、って思ったのに。
あーあ、馬鹿みたい。
おれらはおれらなのに。
なんか、かっこつけたいとかあるのかな、おれにも。
でもいまおれがかっこつけたところで、それって一番ダサいのに。
『研磨くーん』
「ん?」
『たこ焼き焼けたよ、あっち座る?』
「あ、うん。座ろ」
たこ焼きを2種類半分こして食べて、
ソフトクリームを一つ、買った。
冷凍したフルーツとミックスされて出てくるやつで、
穂波に選んでもらった。いちご。王道。
いくらいい天気とはいえまだ2月で、
寒い寒いとか言いながら美味しく食べた。
目の前にいる穂波の顔は綻んで、幸せそうで、かわいくって。
それだけでいい。 それだけで、いい。