第38章 シロワニ
ー研磨sideー
笑いの波が落ち着いてから
またしばらく水槽の中を観察した。
穂波は大自然を知ってるから
こういう水槽の中とか檻の中の生き物をみて、どう思うのかな。
悲しくなったりするのかな、とかもちょっと考えたんだけど。
もちろん全く何も思わないわけではないんだろうけど
穂波は素直にこの場所を楽しんでいるように見えた。
…それが、穂波の魅力だな、と再確認。
この場所を存分に味わって、きっと自分なりに噛み砕いて消化して、
自分の一部にしていく感じ。
『わたしさ、小さい頃からいつも』
「…?」
『水族館にくると、飼育員さんに恋をする』
土産屋で穂波はリアルなデザインのシロワニの磁石を一つ買って
それから水族館をでる。
お腹も空いたけど折角だし公園も歩きたいね、
的な感じで歩き出すと穂波が喋り出す。
「…へぇ」
『とてつもなくかっこいいなって思う、心から』
「…ん イルカショーのお姉さんはたしかにすごいかっこよく見えた」
『ね、あとさ、一緒に泳いだりするショーとかあるとさ大変。
本当に一目惚れ!みたいな、しばらくほわほわするの』
「…ふ 笑 困ったな、気の多い彼女で」
『なっ あっ いやっ…』
「…笑」
すごい慌ててる。 かわいいな。
『んと… えっと……』
「そんなことない、って言えないの?笑」
『それは、その……』
「…そっか」
『…あ、えっとねっ …そんなことなくはないんだけど、そんなことないっていうか』
「…笑」
『………』
「あはは 笑 そんなことわかってるから大丈夫だって」
ほんと、かわいい。
いろんな自然や動物、建物はじめ人工物、
年齢性別問わず人々に穂波が程度の違いはあれど
ほわほわしたり ときめいていることくらいわかってる。
それがまたたまらない魅力だから、
おれは穂波を放っておきたいって思う部分があるわけで。
ほんと、おでんたぬきのおじさんの力を持ってしても、
おれのこの穂波への想いは全部は伝わりきらないんだな。
…だから余計にいいんだろうけど。
何しても大丈夫とは思ってないっていうか。
そんなこと穂波が思うわけないんだけどさ。