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【ハイキュー】   “波長”   【孤爪研磨】

第38章 シロワニ










「穂波は平気なの?」

『不思議な感じだけど気持ちいいと愛おしいがすごい』

「…笑」

『楽しいね、研磨くん』

「うん、楽しい。穂波がいればそれでいい」

『………』





いつもの声量でつぶやいたその声は
研磨くんの反対隣にいた女性二人組にもちゃんと聞こえていたようで、
声を殺してつつき合っていた。

わたしもその仲間に入りたいくらい、
研磨くんからの甘い言葉は嬉しくて、そして未だにどこか他人事である。

穂波がいればそれでいい……

頭の中で反芻して、顔が熱くなっていく。






「…?」






わざと恥ずかしがらせて ふ って笑う時もあるし、
こうして恥ずかしがってるわたしを キョトン とみてる時もある。

緩急が… いつもいつも緩急がずるい。
天然と、意図してやったそれの巧みな攻防がすごい。
きっとわたしは永遠にそれに転がされる。














「シロワニ… 迫力すごい」







手を離したり繋いだり、
思い思いに動いて見ている




最後の方、サメの水槽があって。




シロワニという名前のサメ。
すごくなんだろう、絵に描いたような風貌のサメ。
かっこいい。




「…歯、見た? すご」

『シロワニは胎生なんだって』

「へぇ… どういうこと?」

『卵がお腹の中で孵化してから生まれるの』

「へぇ… そんなのもあるんだ。 あれカモノハシって…」

『カモノハシは哺乳類だけど卵生。 孵化してからは母乳で育てる』

「へぇ… 穂波そういうのすきだよね。詳しい」

『詳しくはないけど、気になり出すと止まらない性質が発揮される分野』

「…笑」

『シロワニは、だから、2匹だけ生まれる。
いや、お腹の中で生まれて共食いをして、それから各部屋に残った1匹ずつ。
計2匹が海へ出ることができる』

「………」

『…はぁ 世界は厳しく美しいね。 野生動物は無限に心を攫っていく』

「………」

『………』

「ここ水族館…」

『…笑』

「…笑」

『あはは… 笑』

「いやそういうつもりじゃないのはわかってるんだけど…
もうどっか海の中を想像してたんでしょ、わかるんだけど…笑」




なんだかツボに入ってしまって、
声を殺して2人で笑った。






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