第38章 シロワニ
ー穂波sideー
「11:30からイルカショーだって。 みる?」
『なんか丁度いい時間だから、観よっかってなるね』
「ね、じゃあ、あっちかな? 行こ」
研磨くんが差し出した手を取り、歩き出す。
白いベイカーパンツに杢ベージュのフーディー、
キャメルのシャツジャケットに、黒いリュックとコンバース。
今日も今日とて…
かっこいい研磨くん。
すきすき。
「…?」
『…?』
「…ふ かわいい」
『 ! 』
何度言われても、嬉しいし照れるその言葉。
研磨くんの言葉は本当に魔法だ。
「なんか水槽近いね」
『だね、近いね』
「水、かかるかな」
『かからないよ、わざとやらない限り。着水名人だもん』
座ったまま手を繋いでぽつぽつと喋る。
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イルカショーのあと、館内をじっくり観て回った。
クラゲ×研磨くんがたまならくたまらなすぎて、携帯を取り出し写真を撮った。
ペンギンはいつまでも見ていられるような、どこかコミカルな可愛さがあるし。
ピラルクが大きくてかっこよくってわぁ、となった。
いつどこでみてもウミガメはわたしの心全てを掻っ攫って魅了するし、
サンゴ礁の海はやっぱり宝石としか形容できない美しさ。
ふれあいコーナーで、ドクターフィッシュの水槽に手を入れた。
やっぱり研磨くんは小さく震えた声を出してくすぐったがっていて、
たまらなくきゅんを増殖してくれた。
研磨くんのくすぐったい笑いは非常に罪深い。
だからってこしょこしょしようとも思わないし、
して気分よくいてくれるかもわかんない存在だからこそ、
こういう、自然な流れで聞ける、
くすぐったい笑い声がたまらない。
顔も。 全部全部。
「あはは… 笑 ちょっともう、無理」
『…笑 はい、ここ、鞄にハンカチかけといた。使って』
「…ん」
水道で手を洗ってわたしの隣にまた、来てくれる。
当たり前なようで、すごく嬉しい。