第37章 powder
ー研磨sideー
2月14日(木)
今日は穂波が弁当作ってくれるって母さんに言われた。
普通に返事したんだけど、
「相変わらずそういうの疎いのかなんなのか、まぁいいわ」
とか言ってた。
そういうのってなに?
一昨日三連休明けの火曜日。
穂波はフルチャージって感じでキラキラしてた。
うるさくも眩しくもないけど、
そして別にいつも満たされてる感じはあるけど、
それでもやっぱスノボやサーフィン帰りの穂波は特別魅力的だ。
月島もほんとに手は出さなかったみたいだし、
(…朝起きたら一緒の布団で寝てたって聞いた時は驚いたし、
ゲレンデでキスされたって言ってたけど……)
こっちもこっちで月島にいいよ、って言ったんだから
そのくらいはってわけじゃないけど、いやだけど、別にいい。
穂波はおれのだし。
そんなことを考えながら朝練の終わりに下駄箱に行くと、
小さな箱とか袋がいくつか入ってて。
小さなカードとか手紙もあったりなかったりで。
「ぅおおおおおおおーーー!俺の下駄箱にも、ついに! つ、ついに!!」
虎が何か叫んでいて、今日はバレンタインだということを知った。
下駄箱に入っていたうちの一つはマネ二人からだった。
敢えて直接じゃなくて、下駄箱に入れてみたかった、と言ってた。
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『はい、研磨くん。お弁当です』
「…ん、ありがとう」
穂波の弁当、嬉しい。
今日はなんだろ。
コロッケ2種類(かぼちゃ、ひよこ豆)、菜の花とベーコンの炒め物、
しらす入りの卵焼き、にんじんとツナのマリネ、ひじきと鶏ひき肉の煮物。
ご飯の段には、たくあんと梅干しとあと鉄火味噌。 それからりんご。
全然浮ついてない。
安定の穂波弁当。
「…うま。 これが鉄火味噌?」
『うん! どうかな?』
鉄火味噌っていうのを、初めて作ったんだと月の初めに言ってた。
なにそれ、と聞くとまた嬉々としてかわいい顔話して、
こんどお弁当にいれるね、うち来た時も出すね、って。
人参、ごぼう、れんこん、生姜を細かく細く刻んで、
赤味噌と混ぜて、パラパラになるまで炒ったって言ってたっけ。
「…ん。 おいしいよ」