第37章 powder
ー穂波sideー
バイキング!
何度経験しても、
どうしてこうも胸が高鳴るのか。
そのおかずが手作りだろうと、既製品だろうと、
この高鳴りは小さな頃から変わることはない。
むふふ、むふふとなりながら、
でも装いすぎないように悩みまくって徘徊するわたしを
蛍くんは呆れた様子で、
でもとびきり優しい目で見守ってくれた。
蛍くんにはよく、これを思う気がする。
見守ってくれてる、って。
「こういうとこは、賢いですよね」
『…ん?』
「盛りすぎない」
『うん、食べ物への想いがすごいあまりに、逆にね』
「…笑 そういう理由なんだ」
『…笑 そういうことにしておいて!』
朝食のあと、午前中はロングランのコースをゆっくり景色を見ながら滑る。
かわいいかわいい樹氷たちをしっかり目に焼き付けたい。
それから横倉の壁に行ってみる予定。どうなることやら。
昼食をゲレンデ内のどこかのレストランで食べて、
お昼軽く滑ってから、ここに帰ってきて日帰り入浴を利用する。
16:30に仙台行きの直通バスが出るので、それで帰る。
よーし、楽しむぞー!
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「ザンゲ坂が思いのほかよかった」
『うん!雪もよかったね〜 景色も。
蔵王地蔵尊にお参りもできたし』
「埋もれてたね 笑」
『うん、埋もれてたね。笑 あれが冬のデフォルトかな。逞しい』
「逞しい? …じゃ、横倉行きますか」
『うん!行ってみよー』
「いや、僕は下でギャラリーに混じって待ってるんで」
昨日降った雪がきらきら朝の光に光って、
そしてふわふわでふわっふわで完全にハイになってる。
えもいわれぬ浮遊感。
雪、波、雷、風、雨… そして太陽の光。
数えきれない自然のいろいろが
時折わたしをハイにして、すごいとこに連れてってくれる。
こんな時に研磨くんがいたら、わたしはどうなってしまうんだろう。
あああ…
思い出したら会いたい会いたい。
でもまずは38度の壁!
転げ落ちても自分も他の人も怪我さえなければいいや。
楽しも〜っと