第37章 powder
布団を捲って入り横になると
正面から抱きついてくる
脚も絡めてくるものだから 浴衣の裾がはだける
このまま襲ってしまおうか。
僕のこと嫌いではないはずだし
こういう行為はもう本能でしてしまうような人だと思う
めちゃくちゃにして
彼氏に許してもらえないくらいに抱き潰して
僕を刻んでしまえば僕のものになるだろうか
…馬鹿らしい。
泣いてる穂波さんは見たくない。
嬉し泣きは別として
そして、無理に笑う穂波さんはもっと見たくない
あの屈託のない笑顔を壊すくらいなら
もう一生会えない方がマシだ
…心からそう思っちゃってるんだから
それはそれで馬鹿らしいな、と自嘲しつつも
腰にそっと腕を回し目を瞑ると
不思議なほどに睡魔が一気に押し寄せた
…だからここはもっとムラムラするとこなんだよ。
そんなことを頭の片隅で思いながら眠りへと落ちていく
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一度穂波さんが動く気配にうっすらと目が覚めた。
抱き寄せ呼び止め、また眠りにつく…
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目が覚めた。5時半。まだ暗い。
穂波さんは僕に背を向けて間接照明で本を読んでる。
僕は穂波さんの腰に腕を回して抱きついてるわけだけど…
部屋、暖かくしてあるし本持ってきてるし…
一旦布団抜けてまた、入ったのか?
『…あ、蛍くん起きた? おはよう』
「…うん。起きた。 おはよ」
眼鏡をしてないからぼんやりとした世界。
「暖房つけたの?」
『…ん? うん』
「…で、布団に戻ってきたわけ?」
『…うん、わたしが誘ったって蛍くんが言ってたから』
「…」
『…お白湯飲む? お茶がよかったら淹れるしそれからお風呂行こっか』
「…そうですね。 白湯がいいかな」
部屋にあるウォータサーバーからお湯を注いで机に置く。
…ひとつも気取らない、なのに一つ一つが丁寧で、朝から心地いい人だ
『…寝れた?』
「…まぁ、結果的には」
『うん、よかった』
「………」
気付いたら一緒の布団で寝てたのに
一つも疑ってる気配がない
でも気になるだろうから一応昨日のことは話しておいた。
僕が寝れなかった理由ではなく、なんで布団に入ることになったのか、について