第37章 powder
ー穂波sideー
『…んー……』
目が覚めた。
お布団あったかい。
昨日滑り通したけど、温泉効果か、まだ16だからか。身体は軽い。
そして背中に当たる人肌の温度が心地いい…
『へっ!?』
人肌とは…?
首を後ろに向けると蛍くんがいる。
わたしのことを後ろから抱きしめて寝てる。
腰に腕をまわし、左手は… 浴衣の襟の下…
へっ!?
あれっ!?
浴衣は着てる。布団も乱れてない。
ベッドの和室は空きがなかったから、お座敷布団の和室で。
昨日の夜、蛍くんが寝てたはずの布団はすこし距離を空けて敷いてあったけど。
まぁそんなのは今どうでもいいか。
何が起きた?
というか浴衣の下、直で胸に、蛍くんの手のひらが…
でも蛍くんよく寝てるし…
あしたも普通に朝練だし…
起きるまで待つ…か。
とはいえわたし起きたのって、4時とかで…
だからきっと今4時5分とかで…
蛍くんは温泉、6時くらいに入るって言ってて…
いやでもわたし、やっぱここすり抜けてお風呂入ってこよう。
この状態で起きても気まずいし…
部屋ももう暖房いれてあっためてしまおう。
浴衣の下に入ってる手をそっとどかし、
じわりじわりと身体を離すように布団の端の方へと動く。
もう少し…のところでぐいいっと腕に力がこもって抱き寄せられた。
「…寒い。 自分から誘ったんだから、まだここにいてよね」
眠そうで気怠そうな 蛍くんの声
自分から誘った…とは?
いや気になる、気になるけども蛍くんはわたしの髪の毛に顔を埋めて
またすーすー寝息を立てている。
…なんだろこのわたしの。
眠ってる人を邪魔したくないという想いは。
…いやもちろんこれが蛍くんじゃなかったら、
蛍くんだとしても2人の浴衣がはだけてたら、
それはもうそれどころじゃないだろうけど。
この場合、なんというか…
抱き枕なだけ、というか…