第37章 powder
ー穂波sideー
お夜食… はぅぅぅ……
小ぶりの梅うどん、味噌焼きおにぎりひとつ、
茶碗蒸し、切り干し大根煮、お漬物
沁みる…
蛍くんのうどんは普通サイズのどんぶり、おむすびも2つ。
美味しいね、沁みるね、なんて言いながら食べた。
「明日、あそこ行きますか? 僕は無理ですけど」
…話の切り出し方がものすごく蛍くんぽい。
『…笑』
「横倉の壁」
『…あぁ 考えてなかった』
「滑ったことある?」
『いや、まだないや。周平とこっちの方もうずっと来てないし』
「もし行くなら」
『うん』
「僕は下で待ってる」
『あはは!うん、前置きあったもんね、事前に』
「途中まで一緒に行って迂回しても良いけど、どうせなら見たい。でもパウダーで見えないかな」
『何度だっけ?』
「斜度38度じゃなかった? 一度転ぶとほんと下まで滑り落ちるって聞いたけど」
『あはは、雪だるまになっておりてきたりして』
蛍くんがゲレンデのマップを広げる。
「横倉ゲレンデに合流するから、ここで待ってれば良いよね」
『うん。そうだね』
「…笑 普通に行く気じゃん」
『うん、気になるもん。38度って視覚的には相当な感じだよね』
「…だろうね、上から見ると斜面には見えないだろうね」
『うぅぅぅ〜 唆られる
わたしさ、ランプでドロップインするのが苦手なの。スノボでもスケボでも』
「へぇ」
『でも、山ならいける気がしちゃう不思議』
「すごい根拠のない感じがしたけど大丈夫?w」
『…笑 うんきっと大丈夫』
「ここ広いからまた風呂上がりにでも明日どこ滑るか考えよう」
『うん』
頼もしいなぁ、ほんとに。
「…じゃ、温泉ですね」
タオルとか着替えはさっき部屋に戻ったときに持ってきたので
このまま温泉へと向かう。
「穂波さん、鍵持ってて」
『え、いいよ。きっと蛍くんが先にあがるし』
「でもそれはわかんないし。
僕はここで待ってても大丈夫でしょ。
穂波さんがもし先に上がってここで待つのは僕的に嫌だから。 はい」
さらっときゅんとさせられてしまった。
短いお礼を告げ鍵を受け取り、暖簾をくぐる。