第37章 powder
ー穂波sideー
ひゃー楽しい。
なにをしようとかそういうのはなくて、
ただただひたすら滑っては登ってを繰り返して多分、1時間半くらい。
ちょっと休憩。
「ただただひたすら」
『滑ってるね。最高』
「ほんと、最高」
『蛍くん最高』
「穂波さんこそ」
『…ぶっ 笑』
「あははっ 笑」
なにこの会話。
暫し二人で笑い転げた。
ふっとその笑いの波が凪いで、しーんとした空気が流れる。
蛍くんはまっすぐにわたしを見つめてる。
優しい目。 胸がきゅううとした。
グローブをはめた蛍くんの指が
わたしのフェイスマスクをすっとずらす
『………』
蛍くんも自分のマスクをすっとずらし、
ふわっと唇が重なる。
…はゎ
優しく、甘く、あったかく。
吸い付くようにわたしを求めるキス。
舌先が唇に触れ、
わたしはその蛍くんの舌を…
迎え入れてしま…
…わない。 危ない。 危ない。 危なかった…
『…ん ナイトクルージング』
「はい? あぁ、音楽」
『何でこんな浮遊感… はぅ…』
「はぅ?笑」
胸がどきどきしてる。身体の芯が熱い。
「…じゃあ時間になるまで滑りますか」
『…うん!』
「…僕のこと受け入れそうになりました?」
ゴーグルとマスクで見えないけど
その表情は容易に想像つく。
あのいたずらで、魅力的な顔をしてるんだ。
「はぁ、最高。 ほんっと、穂波さんて…」
『………』
・
・
・
それから21時まで時間の許す限り滑った。
なにをどうしたとかはわからないけど
蛍くんを置いて先に行ってしまって下で待ってる時もあったし
蛍くんの滑るのを見たくて後ろから追いかけるように滑ったりもした。
蛍くんが先に行ったと思ったら
途中で合流したりとか…
ただただお互いそれぞれ赴くままに
気持ちよく滑って、気持ちよく過ごして…
そしてそれをただ共有して。
あー、楽しい!
筋肉痛になりそう、とか言い出しそうなとこだけど、
蛍くんの口から筋肉痛のき、の音も出てこなかったナ