第37章 powder
ー月島sideー
オリーブグリーンのジャケットに黒いパンツ。
黒いニットキャップ。
普通なんだけどね、最高に可愛い。
…それに
「上下sessionsだ。 いいな、やっぱかっこいい」
『あ、蛍くんもすき? かっこいいよね、ここの』
「うん。 日本で買ったの?」
『…これカリフォルニアのブランドなんだけどね、お兄ちゃんが仲良くって。
それで、その流れで』
「…もらったの?」
『ううう… お零れ話でなんだかなぁだけど。そうなの』
「別にそんないうの躊躇しなくても」
『………』
「…グローブは装備してないみたいだけど、忘れないようにね 笑」
『あ、うん』
「じゃ、行こっか」
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…小一時間滑って、軽く食べよっかってレストランに行くんだけど
「いや穂波さん、普通に上級者でしょ。ムカつくな」
『えぇっ むかつかないで… 蛍くんと滑るの楽しい』
カービングしなかったのは僕の速さに合わせたのか?
いや僕も普通のカービングくらいできるけどさ。
さっきグラトリとかはしなかったけど、絶対できるしこの人。
特別なことしてなくても、上手い人ってやっぱわかる
「…冗談じゃないけど、冗談です。いっぱい見せてください、かわいいとこ」
『あ…』
「いやいや、たてなーい。 転んじゃったー。 止まれなーい。
って言うのがかわいいとか僕、思わないんで」
『…まだなにも』
「のびのび滑ってるとこもっと見たいです」
『…ん。 でもナイターはツリーランできないし
広いとこでただただ気持ちよく滑ろう』
「はっ!?」
そっかこの人、そうだよな。
少し想像すればわかることだった
整備されたバーンじゃなくて
バックカントリーが好きだろうなってことくらい。
『それにしても樹氷、かわいいねぇ。ほんと、モンスターみたい』
「…うん。 ねぇ穂波さん」
『…ん?』
「なんでもない」
『…?』
ゴーグルもフェイスマスクも外して
ゲレンデを眺める穂波さんが可愛すぎて、
こっちを見てもらいたかった。
「っていうかその板かっこいいね」
『ねーーー!!』
わ。珍しくすごい被せ気味の返事が来た。