第37章 powder
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『ひゃああ…飲みたいと思ったときに飲めてしまった幸福感たるや…』
ホワイトホットチョコレートを両手で掴み、
ふーふーしながら飲んでる。
シリコン製の携帯カップを鞄から取り出したのには驚いた。
滅多に買うことないけど、そのたまにでショックを受けるから
街へ出るときは持ち歩いてる、そう。
でもゴミを出したくないからこれで頼んでるのに、
紙カップで作ってから入れ直されたことがあって
その時は床にへたりこんで脱力してしまった、と言ってた。
確かに本末転倒だけど、
想像するとおかしくて笑ってしまう。
「それ、いいね。サイズいろいろあるの?」
『うん、いろいろあるよ。蛍くんはいつもそのサイズ?』
「うん、普通にトール。穂波さんはショートなんだね」
『うん。大体ショートかな』
「…覚えとくよ」
今は、バス停にいる。
荷物いっぱい持って。
スキー場までのバスを待ってる。
『あのね、わたしが中一の頃とかそれくらいまでの話なんだけどさ…』
「…うん」
『アメリカのスタバで抹茶フラペチーノを頼むとね、
メロンシロップが入ってきてたんだよ』
「げっ」
『すごいよね、その単純さというか大胆さというか。脱帽』
「美味しいの? それってメロンフラペチーノになっちゃわない?」
『わたしも友達の一口もらっただけだからあんまりわかんないんだけど、
とにかくそれは抹茶フラペチーノではなかった。というか、うん、メロン味だった。
メロンシロップなしでってお願いすると普通に抹茶フラペチーノだったよ』
「中一くらいまでって言ってたけど今は改善されたの?」
『うん、今は普通に美味しい抹茶フラペチーノを作ってくれるよ』
「…そっか すごいなそれ。 どういう思考回路で……」
『どう想像してみても、色でつなげた?としか思えなくて笑えてくるんだよね。
それと同時に脱帽する感覚っていうか。 参りました〜ってなる』
「あはは! うん、たしかに。
突っ込むのもめんどくさくなりそうな単純な思考回路」
『それでも蛍くんはきっと、ちゃんと突っ込んでくれるんだろうなぁ』
「さぁ、どうだか。 …バス、あれだね」
スキー場行きのバスがターミナルに入ってきた。