第37章 powder
ー月島sideー
「あはは! そんなこと百も承知で来たんじゃないの?」
君からの僕への謎の信頼も
ある意味呪いだ。
でも、そうだね。
息苦しいものでは一切ない。
切なさも、ない。
変なんだよ、もういちいち。
これはもう僕はきっと、負けを認めてる。
孤爪さんに対して。
だからってもしかして、のチャンス待ちってわけでもない。
ただただもう、この人との今ある関係を楽しんでるっていうのが、
一番しっくりくる表現かもしれない。
この人とじゃないと起こり得ない数々の出来事を、
ただ、味わっている。
『………』
「まぁ、気楽に行きましょう。今のは言葉の綾です」
『…うん。こんな風にゲレンデ行くの初めて。楽しい』
「だね、僕も」
『あ、蛍くん寝ていいからね。 部活の後だし』
「うん、でも車で寝たし。もし眠くなったら山形駅からのバスで寝るよ。
電車は立ち上がれるし、歩けるし。 どうせ寝るなら、身体動かせない方で」
『…確かに。 さすが蛍くん』
確かに穂波さんは浮足立ってるんだろうし、楽しそうにしてる。
でもやっぱり、落ち着いていて、うるさくない。
…つまり、可愛くて仕方ない。
「何か甘いもの、持ってます?」
『うん。持ってるよ。元気玉とね、あとイチジク』
「…イチジク? あ、ドライ?」
『うん、ホワイトチョコかけてきた』
「じゃあ、それ食べたい。 ていうか元気玉ってなに」
飴、とか チョコ、じゃない返答に、
全く想像のつかない方を聞きそびれるとこだった。
元気玉は聞いたところ確かに元気玉というにふさわしい原材料で作られたものだった。
ドライフルーツとナッツをペーストにして丸めたものらしい。
ココアもカカオニブも入れて、チョコ感強目にしたよ、だそう。
そっちはまた後でもらうことにした。
「…美味しい。最近穂波さんの作ったもの食べてないからな」
『これは作ったとは言えるほどのもではないけど…』
「…まぁ確かに」
『ホワイトチョコの気分の時ってあるよね。他のフレーバーじゃ代わりが効かないの』
「あぁ、うん。ちょっとわかるかも」
『ね!あるよね! 山形駅スタバあるかな』
「…? あるけど」
コーヒー飲めないんじゃなかったっけ