第37章 powder
ー穂波sideー
昼過ぎ、仙台駅で待ち合わせ。
直通バスは午前中と正午あたりにしかなかった、
ゆっくり電車とバスを乗り継いでいこう。と前に蛍くんから連絡が来た。
わたしも蛍くんも自分たちの足で、というのかな
大人が運転してくれる車ではなく
公共交通機関でスノボへ行くのは初めて。
なんだかわたしは浮足立っている。
「穂波ちゃーん!」
名前を呼ぶ声に振り向くとにっかーと笑って手を振る明光くんと
ぺこりと小さく会釈する蛍くん。
かわいい兄弟だな。
手を振り返し近づいて少しお話しする
「ちょっと荷物増えちゃうけど、これ宿の人に渡せよ。
高校生だけでの宿泊特別OKしてくれたんだから」
「…うん、ありがと。 じゃあいくね」
今回ホテルへの掛け合いも、
親の了承を得る際にまだ蛍くんのご両親と面識のないわたしのことを
説明?してくれたのも、明光くんだったと蛍くんに聞いた。
その後うちの親と蛍くんの親御さんも電話で話し
わたしもお話しさせてもらった。
わたしたち2人のノリの計画を実行するにあたり
ほんとに大事にしてしまって、なんというか…
わたしたちってほんとまだまだ子供だね…ってなった。
そしてこのノリの計画を一緒にしてる相手が
遊児や侑くん辺りではなく、蛍くんっていうのが、
ちょっとわたし的に面白くって。
でも蛍くんだから、実行できたのかなとも思う。
なんていうか、ご両親からの信頼とかそういうもの。
兎にも角にもわたしは次、宮城へ来る時は蛍くんのお宅へ挨拶へ伺うという
大事な大事な用事ができた。
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「まぁ、正直この信頼は脅迫でもあるよね」
山形行きの電車の中で
ボックスシートに座ってる。
『あはは、そうだね。信頼されてるって、何よりの足枷だったりするよね』
「足枷って、なんか、らしくないね」
『そう? けど別に悪い意味じゃなくて、なんだろうね。
でも信頼ってちょっと呪いっぽいな、とか思う』
「………」
『あ、全然息苦しさはないし、その、いろんな信頼の形があってだね。うまくいえないけど…』
「穂波さんの色気に勝てずに襲ってしまうかもって立場の僕からしたら
ものすごい恐ろしい呪いだけどね、それは」
『ふぇっ……』