第37章 powder
ー白布sideー
『うん!白布くんに会いに来る!
それから、またこのお店来ようね』
…なんだよそれ
はぁ… 疲れる。
疲れるくらい、かわいいなこいつ。
実際癒しの方が強いけど。
「…じゃあ、そろそろ行かないとか」
『だね、寂しいねぇ』
「お前さ、俺が寮生だからってそれ言ってる?」
『…?』
キョトン…てするわな、わかってる。
「いやわかってるよ、心からただそう思って言ってくれてるって」
『………』
「でも俺が一人暮らしだったら連れ込むぞ、そんな顔してそんなこと言ったら」
『………』
「まだあんまそういう状況とか経験がないみたいだけどさ、
これからこう、もうちょっときをつけろよ、マジで」
『…ん、わかった。 気をつける。 ありがとう』
「…じゃあ、行くか。 バス停まで送る」
・
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穂波が乗ったバスを見送って寮に戻る。
…何度もキスしてしまおうかと思った。
実際キスしても穂波は次の機会があれば
本当にまた会いに来るだろうし…
でもなんとなくやっぱり、
それは俺にとってよくない気がした。
…だから実行には至らないわけだけど。
俺このまますげー一途で健気な片想いして過ごすのか…
とか思わなくもないけど、
でも俺はどうもそういう質っぽい。
感情の種類は違うけど、牛島さんへの尊敬はそんな感じだし。
それは牛島さんが引退してもなお衰えることはない。
…数日後のバレンタイン、
女子からまたいっぱいチョコを渡されるのか。
渡されるだけも面倒だし、
想いを伝えられるのも面倒に感じてしまう。
穂波なら全てに、笑顔で対応するんだろうな。
そうやって自分の場合に置き換えて想像するとちょっとすごいな、と思う。
それと同時に、天然たらし、ほんとに厄介だ。
穂波は時折何かをばら撒いているように見える。
人を幸せにしたり、魅了したり、心を落ち着かせたり、笑顔にしたり。
圧倒的な明るさ、だと まぶしすぎて辛くなる人もいると思う。
でも穂波のそれはちょっと違う。
寄り添うような、波みたいな。
お伽話かよ、って感じだけど、魔法の粉を撒いてる。