第37章 powder
ー白布sideー
結局まだ一緒に居たくて引き止めた。
鉄板焼きの店を出て、
手繋いで来たのは夜の喫茶店。
時間が止まったような感覚になる場所。
『おおお…夜の喫茶店っていいね』
「だよな、俺も中三のころ受験勉強してるときに家の近くのとこ行ってた」
『あー確かにいいかも。 うん。 永遠に勉強なり読書なりしていられそう。
ドアが開く音すら心地いい。 ベルの音とか』
「………」
おれはコーヒー。
穂波はルイボスレモンティー。
もしバスの時間までにお腹に余裕ができたら甘いものも食べようね、とか。
さっきは隣に並んで。
今は向かい合わせで。
どっちもいい。
好きな子にこんな時間に、
こんな無防備にそばにいられると、自惚れるっていうか。
勘違いするわ、まじで。
「なぁ、穂波」
『…ん?』
「手、出して。 机の上で繋ぎたい」
『…?』
「安心する。 またしばらく会えないし、だめ?」
『え、いいよ。わたしも白布くんの手、安心する。
っていうか白布くんって安心する』
「………」
自分で言い出したこととはいえ、この天然たらしほんとどうにかしてほしい。
彼氏、自由にさせすぎだろ、まじで。
「俺ってそんな癒し系ではないと思うんだけど」
差し出された右手を両手で覆いながら話を続ける
『癒し系とは言ってないよ。安心する』
「………」
『そうだな…気になることは聞いてくれる。
興味の気になるも、イラッとする方の気になるも、聞いてくれる、でしょ』
「………」
『そこに深く安心するのだ』
「…うん、全然わかんねー。 あ、エッセーはどんな調子?」
『ううう… 散々だよー いい感じに書けてるかなーって思ったんだけど、さ。
いろいろ指摘してもらいつつ徐々にレベルアップしています。
散々だけど、すっごく楽しいよ。添削してくれる人とも感覚が合うから、不本意な感じはしない』
「あぁ… あるよなそういうの」
『ね。あるよね、感覚合わない場合のあれって結構切ないよね』
「…今データとかあんの?」
『うん、タブレットからでもみれる。 読んでくれるの?』
「読めるかはわかんねーけど、見てみるくらいするわ」