第37章 powder
ー穂波sideー
鉄板焼きなんて久しぶりに食べた。
大きな熱々の鉄板で焼かれた海の幸。山の幸。
『おいひい………』
「…お前ほんと食べるの好きだな」
『うん、すき』
「…もっと食う?」
『…食べたいとこだけど そんなに入らない。
でも白布くんが食べたいだけ食べてね。
わたしはあとお好み焼きを半分こでいい感じかも』
「…じゃ、お好み焼き選んどいて」
それから一番プレーンなお好み焼きと、
とんぺい焼き、しらすの焼きおにぎり2個目を追加で頼んだ。
「…これ、穂波絶対好き。食ってみな」
焼きおにぎりを小さくしてどうぞってされる。
美味しそうだなって思ってた。でも一つは多いしって。
『ありがとう』
手を出し受け取ろうとすると…
「いや、口あけろって」
そう言われ、そしてそのまま焼きおにぎりが口の中に放りこまれる。
指についた2、3粒のお米を白布くんが舐めとる。
…色っぽいな
「…なんだよ? そんな顔で見つめると食うぞ」
『あ、うん。いいよ。いっぱい食べてね。わたしも嬉しい』
「…は?」
練習後の身体、筋肉。
白布くんをつくるもの。
こんな風にひょんなことから
同席できるって、ありがたいことだ。
みんなが当たり前にしてる食べるという行為。
一人でもできる。立ったままでも歩きながらでもできる。
でも、こうして2人で同じものをつついて、
食べ物だけじゃなく空間も時間もなんならお小遣いも共有して。
当たり前のようでいて、ありがたいこと。
当たり前だからこそ、ありがたいこと。
やっぱり、食べるって行為がわたしは大好きだ。
「よかったなー。今夜はいっぱいいいってよ」
鉄板の向こうでお兄さんがニヤニヤと笑いながら白布くんに声をかける。
よく焼けた肌、汗が滲んだ額。
かっこいいなぁ… 毎日誰かのためにご飯を作り続けるひと。素材を見極めるひと。
「お?俺に惚れちゃった? ごめんね、俺、愛しい奥さんと娘がいて」
見つめすぎてそんなからかいを受けたりしながら。
白布くんと夕飯の続きを食べた。