第37章 powder
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「お待たせ、穂波」
練習を終えて、汗拭いて着替えて穂波のとこに急いだ。
急ぐ理由は、早く会いたいのもあったし、
あと…天童さん始めいろんな部員に絡まれてると思ったから。
…まぁ実際そうだった。
『あ!白布くん。 お土産ね、お渡ししたからまた食べてね』
「…うんじゃあ、いこ。 お疲れ様です」
さっと行かないとまだまだ話かけられて、
まだまだ話し続けそうだから…
手を引いて連れて行く。
「ひゅ〜! 賢二郎かっこいい〜!」
俺には時間がないんだよ。
今から夕飯食べてバス見送るまでしか会えない。
ちょっとでも2人で居させてくれ。
穂波は振り返りながら手を振って、
それから
『白布くん、おつかれさま』
俺のことを隣から覗き込んで、普通に…
その普通がかわいすぎるんだけど…
でも本人としてはごく普通に、言ってくる。
「うん。 話してたのってZac?」
『あ、うん。大きな声で話しちゃってごめんね』
「いや、別に大きな声ではなかったけど、ただちょうど休憩中でよく聞こえただけで」
『…迷ったんだ』
「…あぁ」
『馬もいた!白鳥沢にも馬術部があるんだね!』
「………」
『広い敷地で迷ってしまってたら、Zacが声かけてくれて、案内してくれた」
「あんなすらすらしゃべるんだな」
『…ん?』
「喋るのもだけど聞くのも。
Zac、全然ゆっくり喋ろうとしねーし、授業じゃない時は特に聞き取りにくい」
『あぁ…Aussie英語。独特だよね。
それを聞き取りにくいってわかるだけ、白布くんはアメリカ英語を聞き取れてるってことじゃない?』
「………」
こうやってすぐ、人の話にすり替える。
嫌な意味で言ってんじゃなくて、
こう、自分自分じゃないって意味で。
もう少し今の流れで穂波の話を聞くつもりだったんだけど。
「…何食う?」
『なにがある?』
…手、解かねーんだな。
繋いだ手があったかい。