第37章 powder

ー月島sideー





「おれ結構、月島のこと信頼してるから」




背筋がぞくっとする。

本人にはそんなつもりは全くないのだろうけど、これは脅迫だ。
僕にとっては。　…こわ





「…それはどういう意味で」

「キスは結構してて、それはあーあ、って感じだけど。
それ以上しないよね。ホテルで、同じベッドで寝てたのに。
それにキスだって、全部、僕が勝手にしました。って感じじゃん」

「………」

「それか穂波が寝ながらやったか。そのどっちかしかない」

「………」

「…まぁ、そんなとこ。
泊まりでもなにもしないって言った以上、なにもしないんでしょ？」

「………」





ほんっと、こわい。この人





「…今はそのつもりですけど。
まぁ僕も普通に思春期の男子なんで。わかんないですよ」

「…ふ　笑　穂波にその気がないうちは絶対しない。月島は」

「………」






…ふ　笑　だってさ。　嫌味じゃなくって心から溢れてる感じ。






「いいよ、別に。おれ結構これ、確信ついてると思うから」

「………」

「おれも穂波とスノボ行きたいし、
て言うかそもそも家以外に一緒にどっか泊まるのとかしたことないから、ちょっとムカつくけどね。
多分穂波にとってはどうってことないことだから。どーぞ」

「………」

「でも、無理矢理なにかして」

「………」

「穂波を泣かせたら…」






なに、こわい。

この人なら絶対に足のつかない方法とタイミングで
人ひとり消す方法だって思いつきそうだし…







「わかんないや。　その時考える。　でもまぁ、それはないかな」

「………」

「頑張って。　穂波かわいいし、色っぽいから。
辛いのは、我慢しないといけない月島の方だと思うよ」





はぁ！？

ほんとなんなの、この人の余裕。






まぁ、そうでしょうね。
我慢するのは辛いでしょうね。

…でももうそんなの、何度もしてきた。

けど、不思議と苦痛ではなかった。
傷つけたくない、笑ってる顔をみてたい、汚したくない、
この関係と距離感を失いたくない。
距離感を縮めてくのはゆっくりでいいから。

心から、そう思っちゃってる老けた思考回路の僕がいるから。
いや逆にガキっぽいのか？