第36章 たぬき
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アキくんがどこか寄るごとに荷物が増えていく。
買ってるんじゃなくて、みんな何かくれるらしい。
来るのがわかってて家柄も知ってる人はお酒とか、食べ物、植木とか。
来るの知らなかった人は店のものとか
アキくんが10代の頃の感覚のままなのかお金渡そうとしてる人もいた。
億単位で稼いでるアキくんに。
アキくんはどうするのかなって
どうやって断るのかなってみてたら ありがとー って言って
財布から徐に出された一万円を普通に受け取ってた。
え、受け取るんだ ってちょっとびっくりしたけど。
その店出てから車に乗る前に電話かけてて。
植木屋に電話してるっぽいのだけは聞こえてきたから、気になって話を振ってみた。
「さっきの店の人、アガベ?とかいうの植えたいって言ってたよね」
アガベが一体どんなものかはわかんないけど植物だってことはわかる。
「言ってたなー。あと、グレヴィレアな」
「…頼んだの?」
「…えー、研磨無粋ー」
「いくらするの」
「畳み掛けるように無粋ー」
「…」
「そりゃもちろんピンキリだけど、小さい苗木を店先に植えても仕方ねーだろ。
育てたいなぁ、って感じだったらそうするけど。 ぼーんて、もう育ったやつにした」
「じゃあ、届くんじゃないってこと?」
「届くだけじゃありがた迷惑だわな」
「植えるのとか、それに必要な土とか、
あそこもうちょっと大きく拡張したいって言ってたからそういうのも全部頼んだってこと?」
「研磨ー 頼むから分析しないでー してもいいけど、詳細聞いてくんなしー」
「…なんで一万円受け取ったんだろって思って気になったから」
「…なるほど。 …で?」
「お礼としてできるようにってこと?」
「…やー別にそんな感じでもないけど、
ガキの頃から世話になったしなんかやりたいなーって思ってただけ。
で、ちょうどいい話聞けたし。造園やってるセンスいい友達も知ってるし。
そっちにもお金落とせて一石二鳥だし。
お金受け取ったのは、俺のこと見る目が変わってないっつーか。
なんだろな、単純に嬉しいじゃん?そういうの。
ガキの頃のまま接してくれるの。まぁ一万円はなかなか貰えなかったけどさ。
だから受け取りたいなーって思った、だけっす。
すんません、特にこれと言ってかっこいい理由なくって」