第36章 たぬき
・
・
・
「あれ?あれー!?」
お腹いっぱいだし晴れてきたから
なんとなく青山まで歩こうかってことになって、
手を繋いで歩いてると、ミッドタウン近辺で前から勢いよく人が来た。
「俺、覚えてる? 上野で! …ちょっと待って、呼ぶ」
カメラを持った男に人に声をかけられた。
それから大声で呼ばれて来た人は上野でおれらの写真を撮った雑誌の人だった。
前にいたもう一人の女性はいなくて、他の人がいる。3人組。
『わぁ、覚えてます。雑誌の…?』
「そうそう!向こうからいい感じのカップル歩いてくるなーって思ってたら君たち!」
「…えっと、穂波ちゃんと孤爪くん!だよね?」
『わぁ、名前まで覚えてもらって光栄です』
「結構読者アンケートで評判良かったんだよ〜2人。かわいいって」
「…ってなわけで、今日もいい?写真!」
勢いに押されてと言うか、断りづらいと言うか…
写真を撮られたのちに歩き出す。
穂波はいくつかケーキを買ってた。
明日の朝ごはんのだからおれも出すって言ったけど、
これは親が留守の間の食費のとこから出すから良いのですって断られた。
・
・
・
家に帰ってまったりしてる。
今日したみたいな何かを食べに行って、なんとなく街を歩いて…って、
いわゆる普通のデートなのかな。
渋谷を歩いたことはあったけど、
目的は公園でその行き帰りに歩いたって感じだったし。
存外、悪くないな。
穂波とだとなんでも大丈夫だ。
今日の夕飯は軽めでいっか、て電車の中で話した。
お腹が空くまで待ってもいいけど、
さっと食べてしまって残りの時間ゆっくり過ごしたいねって。
まぁおれはどのみちゆっくりだし、
穂波も別にせかせかと台所に立つわけじゃないけど、それがいいなって思った。
ごはんがいい?って聞かれて、なんでもいいよと答えた。
…なにかな。