第5章 夏
風が止んでこっちを向いて真っ直ぐに駆け寄ってくる様子は
いつもの穂波で、
完全に持ってかれてた何かが自分のとこに帰ってきた感じがした。
そして真っ直ぐに走ってきた穂波はそのままの勢いで抱きついてきた。
何か言いながらだったのはわかるんだけど、
あまりに唐突で何を言っていたのかはわからない。
ぼけっと座っていたのでそのまま後ろに崩れて、
なんとか肘で身体を支える。
『研磨くん、大好き』
そう言って穂波はおもむろにキスをしてきた。
されるがままに唇を奪われて、しばらくそのまま。
ゆっくりと離れるのを待つ。
「…ん。………」
カズ「……ちょっと研磨」
一同(何言うんだろ〜)
カズ「………そろそろ離れてよ」
研磨「……………」
クロ(…いや、研磨は押し倒されてる側だから、離れようがないんだけど…)
『………あ。…周りが見えてなかった。…ゴメン』
研磨「…ん。大丈夫。分かってる」
穂波は身体を離しておれの隣に座る。
クロ「…たまにほんとに周りが見えなくなるのね。そういうの何度かみた気がするわ…」
夜久「…(遊児は大丈夫か?)」
遊児「………穂波〜!俺とも遊ぼうぜ〜!」
ツトム「そろそろ車いくよ〜。遅くなるし帰り飯食ってくんでもいい?家に連絡しといてね〜」
遊児「ヒャッホーウ!何食う?」
カズ「…………」
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帰りは夜久くんが助手席に座って、
カズくんと穂波とおれが一列目、
クロと遊児が二列目に座った。
ツトム「変な気を使わずに寝ちゃって良いよ〜」
ツトムくんはいつもの調子でそう言って、
それによってか、後ろの席の2人はわりとすぐに寝たようだった。
ツトム「飯食べると眠くなるから、近くなってからにすんね」
『…ん、ツトムくん、わたしも寝ちゃいそ…』
ツトム「ほいほーい。どうぞ♪夜っ久んもね」
夜久「おー、すいません…」
カズ「…穂波、ネムイ」
カズくんはそう言って穂波の身体にもたれかかる。
程なくしておれも含め、みんな車の中で眠った。